看板デザイン会社『CUVIC』です。
デザイン業界や印刷業界で広く浸透している「CMYK」と「RGB」というカラー表現の違いは、看板づくりの現場でも非常に重要な要素となります。
とくに看板は「印刷物」という側面を持ちつつも、デジタルデータから出力するため、その特殊性を理解しておかないと、仕上がり時の色味が想定と大きく異なる可能性がございます。
さらに、屋外での看板は遠目から見られることも多いため、わずかな色味の変化が視認性や印象に大きく影響することもございます。
今回は特に看板デザインのデータを作成する際に必須な知識として、CMYKとRGBの違いや注意点などをまとめてみました^^
よろしければぜひチェックくださいませ!
看板デザインにおけるCMYKとRGBの基礎知識
まずは、看板をデザインするときに必ず押さえておきたいCMYKとRGBの基本を、簡単におさらいしましょう。
CMYKとは?
・C (Cyan) = シアン
・M (Magenta) = マゼンタ
・Y (Yellow) = イエロー
・K (Key Plate/Black) = 黒
CMYKは、主に印刷の現場で用いられる減色混合のカラーモデルです。
白い紙など他の素材の上にシアン、マゼンタ、イエロー、そして黒といった色インクを重ねて印刷していくことで色を表現します。
看板制作においても、一般的にはこのCMYKによるカラー設定でデザインデータを作成し、高解像度の印刷で出力するのが主流となっています。
RGBとは?
・R (Red) = 赤
・G (Green) = 緑
・B (Blue) = 青
RGBは、パソコンやスマートフォン、テレビなどのモニターやディスプレイで用いられる加色混合のカラーモデルです。
光の三原色である赤、緑、青を混合すると最終的に白に近づいていくのが特徴で、ディスプレイ上で色を再現する際に用いられます。
このように、「CMYK=印刷物」「RGB=ディスプレイ上の表示」というイメージを持つと理解しやすいでしょう。
看板といっても、最終的にはプリンターなどで印刷して出力することがほとんどです。
そのため「看板データ CMYK RGB」という点に焦点を当てると、実際にはどのようにカラー設定を行うべきか、注意点は何なのか、ということが見えてきます。
RGBカラーはどんな場面で使われる?
RGBモードで制作したデザインデータは、ウェブサイトやSNSのアイキャッチ画像、デジタルサイネージなど、ディスプレイに表示させる媒体に向いています。
RGBカラー設定の大きなメリットは、鮮やかで発色の良い表現ができること。
さらに、RGBモードのままであれば、パソコンの画面やスマートフォンのディスプレイ上で「見たままの鮮やかさ」を演出しやすいのも特徴です。
しかし、看板は最終的にインクによる「印刷」がベース。ただし近年はLEDパネルを用いた電子看板やデジタルサイネージも増加しており、「看板」と一口に言っても一概に紙や塩ビシートなどの物理的な素材に印刷するパターンばかりではありません。
もしデジタルサイネージをメインに運用する場合は、RGBモードで作られたデータを使用することが自然でしょう。
とはいえ、多くの看板は物理的なプリントが主体となるため、通常の印刷物と同様、CMYKで仕上げるのが一般的です。
これは色の再現性に大きく関わる問題で、RGBデータを直接印刷に回してしまうと、想定外の仕上がりになる可能性が高いのです。
CMYKカラーはどんな場面で使われる?
前述のとおり、CMYKは紙媒体やポスター、チラシ、DM、そして多くの看板や横断幕などの大判印刷で用いられるカラーモードです。
インクを用いて広い面積に色を再現するうえでは、CMYKが基本の設定となります。
CMYKはモニター上で見る色よりも「沈んだ」印象や「くすんだ」感じになることがあり、「画面で見た印象の方が鮮やか」というケースが多いのが実情です。
これは構造上どうしても避けられないことで、RGBモニターが光を発光して色を再現しているのに対し、CMYKインクによる印刷は外部からの光を吸収・反射しながら色を表現しているからです。
看板データでCMYK表示が推奨されるのは、現場での色ズレや発注ミスを極力減らすためともいえます。
CMYKをベースとした色指定やデータ作成を行うことで、実際にプリンターで出力される色味とのギャップを最小限に抑えられるのです。
なぜ看板データはCMYKが推奨されるのか?
板制作は、基本的に以下のようなレイアウト・印刷・加工工程を経て完成します。
■デザインソフト(IllustratorやPhotoshopなど)で制作データを作成
■そのデータをCMYKモードで入稿
■大判インクジェットプリンターなどで印刷
■必要に応じてラミネート加工や、板への貼り付けなどの仕上げ処理
このプロセスの中で、RGBモードのまま入稿してしまうと、出力時に印刷機側で自動的にCMYK変換され、結果的に色の再現性が損なわれることが多々あります。
「モニター上で見た時は鮮やかな赤だったのに、実際に印刷ものを見たら完全にくすんだ赤色になってしまった…」
こうしたトラブルは決して珍しくありません。
CMYK推奨の理由
■印刷物として仕上げる場合は必ず最終的にCMYKへの変換が必要
■RGBのまま入稿すると自動変換され、意図しない色になる可能性が高い
■看板サイズが大きいほど、わずかな色差でも全体のイメージがズレて見えやすい
看板データ作成の段階でCMYKに対応したカラー設定を行っておけば、印刷時の色味に近い状態を制作段階から把握できます。
万が一問題があれば、デザインソフト内で微調整ができるため、完成品の仕上がりがグッとイメージに近づくのです。
RGBデータをCMYKに変換する際の注意点
RGBのままでデザインを進めてしまい、最終段階で「やっぱりCMYKにしなければ!」と気づいて変換することは珍しくありません。PhotoshopやIllustratorなどのソフトにはRGB → CMYKのカラーモード変換機能が備わっているため、対応自体は簡単に思われがちです。しかし、単純にモード変換しただけでは、思い通りの色に仕上がらないケースが多々あります。
注意点1. 色域(ガモット)の差異
RGBはCMYKに比べて再現できる色域が広く、とくにネオンサインのようなビビッドな蛍光系はCMYKでの再現が難しい領域に属します。
結果として「鮮やかだった色が薄くなった」「明るかった色がくすんでしまった」という現象が起こりやすいのです。
注意点2. 黒やグレーの表現
RGBからCMYKに変換した際、黒やグレーを含むデザインが微妙に色転びを起こすことがあります。たとえば「単なるK100(黒100%)」を表現したつもりが、CやMが混在したリッチブラックになってしまい、微妙に茶色っぽい黒になる場合があります。
グレーも同様に、色合いが青みまたは赤みに寄ってしまい、意図しない結果になることがあるため要注意です。
注意点3. モニター環境の違い
モニターの明るさやキャリブレーション設定によって、同じRGBデータでも見え方が異なります。特に看板はシビアな色再現が求められる場合が多いので、作業環境が整っていないと、制作担当者と発注者のイメージに差が出やすくなります。
色校正の段階でサンプル出力を確認しながら進められる体制を整えるのが理想的です。
これらの理由から、看板デザインではできるだけ早い段階からCMYKモードで制作を進めることをおすすめします。
もちろん、比較的小さなPOPやポスター、小ロットの印刷物でも同様のことが言えますが、とりわけ大型看板の場合は色味が大きく視界を占めるため、違和感があればすぐに認識されてしまうリスクが高まるのです。
看板デザインを作成する際のカラー選択のポイント
ここからは、具体的に看板デザインをCMYKベースで行うにあたってのポイントを解説します。たとえCMYKで制作を進めたとしても、選ぶ色の組み合わせや濃淡、配色によって視認性や仕上がりに大きく差が出ます。以下の点を押さえておくと、より伝わりやすく、かつ鮮明な色を使った看板を制作しやすくなります。
コントラストを重視する
大型看板や遠目に見る看板では、文字と背景色のコントラストが重要です。背景色と文字色が似たトーンだと視認性が落ちてしまい、細かい文字やロゴで何を伝えたいのか分かりにくくなることもあります。
たとえば、背景をダーク系のカラーにするなら文字を白や明るい色に、背景を明るい色にするなら文字を濃い色にするといった具合です。
調和を考える
コントラストを強調するだけではなく、全体のブランドイメージや店舗の雰囲気に合った色調・配色を心がけます。強すぎる色ばかりを使うと、視認性は確保できても看板全体のデザインバランスが崩れる恐れがあります。
補色関係をうまく取り入れつつ、見やすくて美しい配色を検討しましょう。
特色インクの活用
CMYKでは再現しきれないビビッドな色やメタリック色などを使いたい場合、特色インクが必要になることがあります。
特色インクを使用する印刷はコストが上がる可能性があるものの、看板へのインパクトを高める際には検討の余地があります。
色見本やカラーチップを活用する
CMYKで指定している色が、実際にはどのように印刷されるのかを把握するには、カラーチップや色見本を使用して確認するのが一般的です。
可能であれば、何種類かの印刷サンプルを出力してもらい、自分のイメージに近い色を選定・微調整していく方法がトラブルを防ぐ近道です。
印刷工程で起こる色のくすみ・色ズレを最小限にするには?
看板を印刷するとき、デザインデータから現物に変換される過程で、思わぬ色ズレや色のくすみを生じることがあります。たとえばCMYKデータといえども、プリンターやインク、メディア(印刷素材)の特性によっては若干の誤差が生じるのです。では、これを最小限にするためにどのような工夫ができるのでしょうか。
プリンターのキャリブレーションの徹底
印刷を請け負う側が定期的にプリンターやソフトウェアのキャリブレーション(色調整)を行い、目標とする色の再現度を上げていくことが重要です。
これを怠ると、同じデータを使っていても日々の気温や湿度、インクロットの違いによって仕上がりが変わってしまう恐れがあります。
試し刷り(色校正)の実施
看板のように大判印刷でも、可能であれば一部を縮小した状態や実サイズの一部切り出しなど、色校正を行って微調整をすることをおすすめします。
特に高額な案件やブランドイメージに直結する看板であれば、納得のいくまで試験プリントを確認するほうが無難です。
デザインソフト内での設定統一
IllustratorやPhotoshopのカラープロファイルを統一し、余計なカラープロファイル変換が行われないようにすることも大切です。複数のソフトを行き来するときは、プロファイルの設定が異なると色や濃度に差が出る場合があります。
社内や外部の制作スタッフにも、同じ設定を使うように指示しておきましょう。
スマートフォンやパソコンでデータを確認するときのコツ
看板デザインを進める過程では、クライアントとやり取りをする際にデータをPDFやJPEGなどで確認し合うことが一般的です。しかし、相手がスマートフォンであれパソコンであれ、ディスプレイ上で見る色はRGBモードとなるため、実際の印刷物と全く同じ色になる保証はありません。
CMYKモードで制作した上で確認用にRGB変換
デザインの原本作成時はCMYKモードで取り組み、クライアントにチェックいただくデータはモニター表示に適したRGBモード変換で作成する方法があります。その際、「画面の色はあくまでイメージであり、最終的な印刷色と若干異なる可能性がある」旨をしっかりと伝えることが重要です。
デバイスによる色差を了承してもらう
デバイスごとのディスプレイ特性や明るさ、コントラスト設定などの差ありきで考える必要があります。特にスマートフォンやタブレットは、機種や画面設定によって色味や明るさに大きな違いが出る事例も多いため、「モニターでの見え方は参考程度」とご了承を得ることが、後々のトラブル回避につながります。
看板特有の要素:視認性を高めるためのカラー戦略
看板デザインは、「印刷物」としてまとめるだけではなく、「屋外に掲示して遠くからでも認識させる」という特質があります。よって、一般的なポスターやチラシ以上に、配色・レイアウトが視認性に直結します。CMYKとRGBの問題だけでなく、以下のような要素を検討しておきましょう。
遠くからでも読めるフォントサイズや色の組み合わせ
文字のサイズや文字同士の間隔(カーニング、トラッキング)も重要ですが、色の組み合わせも同等に大切です。
背景色と文字色の明度差を大きく取ることで、遠目にも文字がくっきりと判別できます。
周囲の環境やライティングを考慮
例えば、夕方や夜間にライトアップする予定であれば、どのような照明の当たり方で文字やイラストが見えるのかを確認しておく必要があります。
日中の自然光と夜間の照明では、背景の明暗が大きく変わってしまう場合もあり、せっかくのCMYKカラー設定でも思うように目立たないケースがあるため注意が必要です。
フルカラーの写真をできるだけ人目に留まる構成にする
看板に写真やイラストを大きく入れる場合は、CMYK変換時に色が変わりやすい領域(特に肌色や自然物のグラデーション)に気を配りましょう。
人間の視線はどうしても写真や人物の顔に向かいやすいため、その部分の色ずれは看板全体の印象を大きく左右します。
事前のテストプリントでしっかりチェックします。
CMYKとRGBを切り替えながら作業するための実践的テクニック
デザイン現場では、場合によってはRGBモードのメリットを生かして作業したい場合もあります。たとえば、大胆な合成や特殊効果を使う際に、RGBモードの方がエフェクトやグラデーションがきれいに表現できるソフトもあるからです。しかし、最終的にはCMYKに変換しなければならない点を忘れてはいけません。そのための実践的な流れを紹介します。
■元データはRGBで作成する(特殊効果や調整をしやすい)
■大体のデザインが固まったら、一度CMYKに変換して色味をチェック
■必要に応じて微調整を行い、最終データをCMYKで保存・入稿
このように、作業途中はいったんRGBモードを使うこと自体は間違いではありません。
ただ、必ず「最終的にCMYKでどう見えるのか」を想定した色づくりをする姿勢が大切です。
また、色変換時にあまりにも大幅な色ずれが発生する場合は、RGBモードでの色設計が現実的に再現不可能なものだった可能性があります。
その場合は、CMYKで再現できる範囲に色を落とし込む工夫をしましょう。
看板デザインを入稿する前に確認すべきこと
看板業者や印刷会社へデータを入稿する際、CMYKとRGBの問題以外にもチェックすべき項目があります。以下は入稿開始前の最終確認リストの一例です。
カラーモードはCMYKになっているか
RGBのまま入稿すると、自動変換やトラブルが発生するリスクがあります。
IllustratorやPhotoshopの「ファイル情報」や「ドキュメントのカラーモード」を確認しておきましょう。
画像リンクやフォントは埋め込みまたはアウトライン化されているか
リンク切れを防ぐために画像は適切に埋め込み、フォントはアウトライン化しておく必要があります。
特に大判看板はデータ転送時の容量も大きいので相互の入稿形式をすり合わせておくと安心です。
トンボ(トリムマーク)や塗り足し設定
看板データでも、カットラインや塗り足し設定が必要なケースがあります。
余白が足りないと仕上がり位置がずれて切れてしまう場合があるので、必ず指示に従って設定しましょう。
実寸サイズまたは縮尺が正しいか
看板は大きいサイズになることが多いため、デザインソフト上では縮尺(1/10など)で作業することがよくあります。
入稿時には「実寸換算で何ミリ×何ミリの看板」かを明確に提示し、担当者と認識を合わせることが重要です。
近似色の代替案を用意しておく
どうしてもRGBでしか再現できないようなビビッドカラーを使いたい場合、CMYKモードでは近い色で代替する必要があります。
その際に、「少し明るめ」「少し暗め」など2〜3パターン作成しておき、実際のプルーフを見ながら最終決定を行う方法がおすすめです。
まとめ
看板データ CMYK RGB、色の基礎をおさえてトラブルを回避しよう!
RGBとCMYKの違いやそれぞれの役割、そして看板を制作する際の注意点や実践的なポイントなどを詳しく解説させていただきました^^
結論として、看板は通常の紙媒体同様「最終的にインクを使用して印刷する」物理的な案件です。そのため、CMYKモードでデザインを仕上げるほうがトラブルを減らし、意図した色合いを実現しやすいといえます。
ただし、現代ではLEDサイネージやデジタルディスプレイを活用した「デジタル看板」の普及が進んでいるため、RGBモードでのデザインが必要となる場面もあります。どちらの方法を選択するにせよ、最終的にどんな媒体で表示(あるいは印刷)されるかをしっかり把握し、色再現のしくみを理解しておくことが不可欠です。
また、CMYKのままでも印刷機やインク、素材、周囲の照明など、さまざまな要因で色ズレは起こりうるという点も押さえておきましょう。
できる限り色校正やテスト出力を行いながら、業者と密にコミュニケーションを取ることが仕上がりの満足度を高める鍵となります。
さらに、遠くからの視認性も考慮し、コントラストや配色のバランスも調整していくことが、看板としてのパフォーマンスを向上させるうえで重要です。
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